八幡平を知る 水

水のイメージ写真

水は暮らしを支え、楽しみもくれる

八幡平のいたるところに湧き水や清水があり、
なかには名水と呼ばれるものもある。
水は、山や里をつくり、暮らしを支え、生命も育む。

八幡平の「水」は
自然によって育まれる

岩手県内水面水産試験場にある「金沢清水」。7つの湧水の総称であり日量10万トンを超える水が湧き出している。 岩手県内水面水産試験場にある「金沢清水」。
7つの湧水の総称であり日量10万トンを超える水が湧き出している。

 八幡平市の里山を潤す水は、岩手山に代表される山々に原生するブナの森に源を発する。ブナの森に保水された雪解け水が伏流水として、清水や湧き水として地上に出て、里山へと流れてゆく。
 八幡平の名水といえば、松尾地区にあり、日本名水百選に数えられる「金沢清水」だろう。周辺7つの湧き水の総称であり、その中でも湧出量を誇るのが「座頭清水」だ。
 座頭清水は、岩手県内水面水産試験場の敷地内にある。建物の裏側に回ると轟音とともに大量の水を吹き上げる噴水がある。その湧出口は、遊歩道の先にある林の中にある泉だ。悠久の時を感じさせる樹々に囲まれた泉は透明度が高く、水底ではクレソンがそよそよと揺れている。時折、遠くの鳥のさえずりが聴こえるほど、静寂に包まれている。ここが八幡平の暮らしを支える水源地のひとつであると思うと、思わず手を合わせたくなる。
 八幡平市には、「長者屋敷太刀清水」、「源太清水」、「熊の泉」など、まちのあちらこちらに湧き水がある。さらに、「下無しの井戸」などの井戸水も残り、大切に守られている。

大地から湧出する温泉はわたしたちの暮らしに恵みを与えてくれる。 大地から湧出する温泉は
わたしたちの暮らしに恵みを与えてくれる。

大地の息吹「温泉」を
生活に活かす

 温泉も水の恵みのひとつである。八幡平には、八幡平温泉郷をはじめ、東日本一の標高にある「藤七温泉」、秘湯と名高い「松川温泉」、ちょっと足を延ばせば強塩泉の「新安比温泉」など、温泉の宝庫でもある。はしご酒ならぬはしご湯も可能なくらいだ。日帰り湯も多く、泉質もバラエティー豊かだから、湯巡りが楽しくなる。
 温泉は、ただ浸かる、ただくつろぐのそれだけでも、十分な癒しや楽しみをくれるが、それ以上の恵みも与えてくれる。
 温泉は、地熱で温められた地下水が湧出したもの。温泉が豊富な八幡平市では、この熱を活用した試みが行われている。有名なものでは、日本初の商業地熱発電所として稼働した「松川地熱発電所」、身近なものでは、地熱染がある。WILDGRAPE FARMの「山葡萄塩」や、八幡平地熱プロジェクトの「八幡平マッシュルーム」も温泉の力を借りてつくられている。

水の恵みによって
つくられる
おいしい食材

酒造りにおいて、水が果たす役割は大きい。 酒造りにおいて、水が果たす役割は大きい。

 水は、人の暮らしと密接にかかわっている。田畑を潤し、米や野菜、果物を育てる、自然からの恵みである。田畑を潤し、おいしい作物を育てる。
 「酒づくりに大切なのが、米と水」と蔵元「わしの尾」の工藤朋さんは話す。わしの尾では、岩手山の伏流水で酒を仕込む。水は舌触りに影響するという。豆腐づくりでも、味を決めるのは大豆だが、水が果たす役割は大きい。「ふうせつ花」では地下91メートルからくみ上げた水で豆腐をつくる。「八幡平サーモン」には、冒頭の金沢清水の清冽な水の中で生育する。八幡平の食材にとって、水が果たす役割は大きい。