八幡平の作り手 伝統の技継承する 岩手山の伏流水と米で醸す
わしの尾の「日本酒」
株式会社わしの尾 工藤朋さん

メーカーの場所 イメージ写真

原料は米と水。
だから、醸造の過程のひとつひとつが大切になる。
蔵元と杜氏の想いが込められ、地元の人たちに愛されるのは、
真摯に米づくりから酒造りまでを行っているからだ。

暮らしとともにある
「わしの尾」の酒

 八幡平市の南部に位置する大更地区。9月中旬になると、田んぼが金色に輝き、稲穂の頭が垂れる。実りの秋の到来だ。地元の蔵元「わしの尾」の田んぼでも収穫がはじまる。
 大更地区は、1712年に南部藩によって新田が開墾されて以来、稲作が盛んな地。また、岩手山からの伏流水が豊富なことから、酒造りに適した環境があったという。それから約100年後の文政12年(1829)、わしの尾は創業した。
 わしの尾は、岩手県内限定で販売されている日本酒である。「岩手県産の米を使い、岩手山の伏流水で仕込まれているから、地元で味わってこそ酒の本領が発揮される」という考えからだ。
 今では岩手県内で購入できるようになったが、ひと昔前までは八幡平でのみ販売していたという。それが盛岡市内を中心に岩手県内で購入できるようになったのは、松尾鉱山の歴史とも関係がある。
 松尾鉱山は、明治時代に発見され、一時期は国内の硫黄生産高の約3割を占め、「東洋一の硫黄鉱山」と呼ばれるまで成長した。しかし、昭和49年(1974)に閉山。これを機に盛岡市へと移住した従業員もいた。その人たちが松尾鉱山時代に飲んでいた酒の味を懐かしく思い、買い求めたことにあるという。
 彼らが愛し飲んだのが「鷲の尾 金印」だ。腰のある甘口の酒で、八幡平市民にとって晩酌や宴会には欠かせない酒となっている。そのほか、岩手県産米・ササニシキを使用した本醸造酒「雄飛萬國翔」、地元の農家や酒販店とともに企画した純米酒「蔵の舞」などが好評だ。

岩手山を望む地にある、わしの尾の自社田。 岩手山を望む地にある、わしの尾の自社田。 歴史の流れ、先人たちの想いが感じられるわしの尾の母屋。 歴史の流れ、先人たちの想いが感じられるわしの尾の母屋。

過程ひとつひとつを
大事にした酒造り

 現在の蔵元は、8代目・工藤朋さん。先達の想いを大切にし、杜氏とともに酒造りに励んでいる。
 工藤さんに「わしの尾の酒造りに欠かせないものは?」と質問すると「米」という答えが返ってきた。日本酒は、米と水を原料とする。麹によって米が糖化されたブドウ糖が酒母によってアルコールになる。糖化と発酵というふたつの作用がひとつのタンクの中で行われる。
 「その中で米の果たす役割は大きいです。米の品質はもちろん、精米の仕方、洗米後の浸漬時間をどれくらいにするか……。ひとつひとつの過程が重要になってきます」
 蒸米でも、麹用、酒母用,掛米用とそれぞれの使用目的に応じて仕上げられる。
 わしの尾は全国新酒鑑評会で、「結の香」(H25、28、30酒造年度)「吟ぎんが」(R4酒造年度)を原料に造る純米吟醸酒で金賞を受賞している。これまでも岩手の酒米が生み出す味わいを大切にしてきたが、その魅力を引き出して誰もが認める美味しい日本酒を造る技術を持つことが認められた。
 工藤さんは、「昔からの酒蔵で昔ながらの手づくりで醸されるわしの尾の酒」と酒器のコラボレーションの企画などもしている。そこには、わしの尾の酒を通じて、八幡平市の魅力を発信したいという強い想いがあるからだ。
 「地酒は醸された地で、地元の食とともに味わってこそ本領を発揮する」
 八幡平市の自然の恵み、歴史、食、暮らしにつながるのがわしの尾の酒である。

①わしの尾の8代目蔵元・工藤朋さん。酒を通したイベントを行っている。 ②蒸した米は、木箱に広げられ、適度な温度まで下げられる。 ③発酵を促進するために行う櫂入れ。酵母の発酵状態に応じて行われる。 ①わしの尾の8代目蔵元・工藤朋さん。酒を通したイベントを行っている。 ②蒸した米は、木箱に広げられ、適度な温度まで下げられる。 ③発酵を促進するために行う櫂入れ。酵母の発酵状態に応じて行われる。

つくり手の愛する八幡平

稲穂の写真

 「わしの尾」で使用される米は、岩手県産がメインにしており、八幡平市内にも自社田を持っている。岩手山や八幡平から流れる雪解け水は冷たく、稲作には向かないという。しかし、自然の力を活用した「松川温水路」のおかげで水温が3度上昇し、米づくりを行うことができるという。先人の農業にかける想いが松川温水路と米づくりに表れている。

わしの尾

岩手県八幡平市大更22-158
TEL 0195-76-3211
わしの尾商品のご用命は、
澤口酒店ホームページを御覧ください。
http://sawaguti-saketen.com/
わしの尾の旬の情報が掲載
公式Facebook 株式会社わしの尾
https://www.facebook.com/washinoo/