八幡平の作り手 生態系を活かした農業を 無農薬の「山ぶどう」で
新たな可能性を探る WILDGRAPE FARM
八幡平山ぶどう農園 三浦学さん


三浦学さんの山ぶどうジュースは甘い。その上で酸味もある。
えぐみがなく、後味がすっきりとしている。
この味の秘密は、無農薬、有機堆肥と、収穫時期にあるという。
土づくりから収穫までこだわってこそ、口福の味になる。
無農薬・有機肥料でつくる
こだわりの山ぶどう
「WILDGRAPE FARM 八幡平山ぶどう農園」の三浦学さんがつくる「山ぶどうジュース」は甘い。一般的な山ぶどうジュースは、甘味より酸味が感じられるが、三浦さんの山ぶどうジュースは、えぐみがなく、甘さが際立ち、酸味はほのかに感じるものだ。
「よく『砂糖を使っているのですか?』と聞かれるのですが、砂糖は一切使っていません。山ぶどう100パーセントのジュースです」
この甘さは、どこからくるものなのだろうか。それについて三浦さんは、「ぎりぎりまで収穫をしないから」と話す。三浦さんは、果実が熟してもすぐに収穫しない。通常より1か月遅くし、霜に2度あて、糖度が十分に上がったところを見計らって収穫をする。この方法では、果実の水分が少なくなり、ジュースとして搾れる量が半分になってしまう。しかし、三浦さんは、妥協しない。収穫するときも、傷ついた果実や余分な枝を切り落とし、良い状態の果実だけを選択していく。そこまで徹底するのは、「つくるならおいしいほうがいいから」と笑う。
土づくりにもこだわる。有機肥料(天然の飼料で育った馬の堆肥)を使い、農薬を散布しない。「だから、安心安全の山ぶどうジュース! でも、収穫までは虫との戦いですよ」と笑う。葉についた虫をひとつずつ手で排除していくという。
手間と時間をかけてつくられた山ぶどうは、主に「山ぶどうジュース」として加工される。そのほか、松川温泉の地熱を使って乾燥させた「山葡萄塩」になる。山ぶどうの魅力を知ってもらいたいと開発した「山葡萄の新芽のピクルス」は、平成27年いわて特産品コンクール食品部門で県知事賞を受賞した。

八幡平には豊かな自然がある
それを大事にしたい
三浦さんは、収穫量が減っても、手間がかかっても農薬を使わないのは、もうひとつ理由がある。「八幡平の生態系を守るため」だ。
神奈川県出身の三浦さんが、八幡平に移住してきたのは、平成20年(2008)のこと。奥さんの実家から送られてくる山ぶどうジュースのおいしさと、八幡平の自然の豊かさに惹かれてのことだった。
当時、カメラマンとしてスポーツや報道関係の仕事に従事するかたわら、モリアオガエルの写真を撮っていた。モリアオガエルは、自然が豊かな場所にしか棲まないカエルである。その生息地が八幡平にあるのだ。
「八幡平市の大揚沼とモリアオガエルは国指定の天然記念物になっていますが、意外と知られていないのです」
このカエルが三浦さんの山ぶどう畑に現れることもあるという。自然を守るために行うことが、おいしい山ぶどうを栽培することにもつながる。
「ぼくの山ぶどう商品を手にとってもらって、『この山ぶどうが育つ八幡平の自然は?』『八幡平はどんなところ?』と興味を持ってくれれば。そのためにも、新しいことにも挑戦していきたい」
三浦さんの山ぶどうと八幡平への愛情がより深まっていくと想像すると楽しみでならない。

晴れた日は雄大な岩手山を望むことができる。

作業中は、足元で休んだり、走り回ったりと、
いつも三浦さんと一緒にいる。

10月中旬になると、八幡平市では霜が降りる。三浦学さんの山ぶどうには、この霜が必要不可欠。葉についた白い結晶をよく見ると、針状、羽毛状、杯状など、いろいろな形をしている。この結晶によって、果実の糖度が上がり、おいしい山ぶどうジュースとなる。
WILDGRAPE FARM
八幡平山ぶどう農園
岩手県八幡平市西根寺田8-86-3
HP http://www.wildgrapefarm.com/
E-mail gaku.orca5150@gmail.com