何も加えず、何も引かない
純粋なはちみつを

　山本養蜂場の採蜜は５月初旬のサクラが咲くころから始まる。その後、リンゴ畑に巣箱を置き、花粉交配をしながら蜜を集める。この時期 のはちみつは、香りがよい百花蜜として出荷される。そのあとは６月初旬のトチ、中旬のアカシアと続き、８月下旬にはそばが最盛期を迎える。
　山本養蜂場では、「百花蜜」「トチ」「アカシア」「そば」の４種類が販売されている。そのほか、クリの花の時期にはクリの蜜も採取されるが、これは越冬 するミツバチのための餌となる。
　康裕さんは、「一種類の花が咲いている期間は天候の影響もあり2週間前後」と話す。
　「花の咲く時期や花の数は、毎年同じと限りません。花が咲く時期にミツバチが最高に活動する状態にしなければなりません」
　そのためには、ミツバチが活動しやすいように、居心地のよい巣箱に整える必要がある。ミツバチが木枠を齧って生じたゴミだけではなく蜜蓋を切った際の蝋 の欠片や巣枠外に張り出した余分な巣の掃除したり、巣箱内の温度を適温に保ったり、スズメバチの襲撃から巣箱を守ったりもする。
　蜜をいっぱい蓄えた巣枠は、遠心分離機にかけられ、蜜が取り出される。混じっている巣の破片やミツバチなどを取り除き、目の細かい網で濾してから瓶詰め が行われ、最後にラベルが貼られる。
　「ミツバチが集めた蜜に何も足しても引いてもいない、ほぼ自然の状態がうちのはちみつなのです」
　山本養蜂場のはちみつは限られた数軒の店でのみ取り扱われている。それは、混じり気のない純粋なはちみつであることのほかに、八幡平と安比高原周辺のみ で採取している希少なものからだ。収量を上げるために花の開花時期に合わせて全国を移動する養蜂家もいるなか、山本養蜂場は自然が豊かで空気がきれいな地 元にこだわり続けている。
　ミツバチの採取は、８月のソバの花の時期が終わると、越冬の準備に入る。里に雪が降る前に巣箱を茨城県に運び、暖かい場所で冬を過ごす。そして、５月初 旬に八幡平市に帰ってきて、花の蜜を集める。

ていねいに濾過されたはちみつは、
１本ずつ瓶詰めされる。 パンやヨーグルトにかけたり、
レモンをはちみつにつけたりと使い方はいろいろ。