八幡平の作り手 八幡平市の特産を全国へ 冷涼な気候を活かしたそば栽培で
耕作放棄地を働く場所に わんだい高原蕎麦 小笠原寿男さん
「耕作放棄地を再生し、雇用を生み出したい」
そのような願いから始まった「わんだい高原蕎麦」の取り組み。
八幡平の風土を活かしたそば栽培は、
上質なそば粉を生み出し、多くのそば打ち職人から好評を得ている。
高齢者問題を解決し、雇用を生む
耕作放棄地の再生と活用
八幡平市内には、農業者の高齢化により、耕作を放棄された畑や牧野がある。それを活用して、そばを栽培しているのが「わんだい高原蕎麦」である。
耕作放棄地とは、採算が合わない、手が回らないといった理由で放棄された農地のことをいう。放置された畑には雑草が生え、やがて木も生えてくる。それは地域によって負の遺産となり、場合によっては、周囲の田畑にも影響を及ぼす。
それをなんとかしたいと思っていたのが、小笠原寿男さんである。
耕作放棄地を再生し、面積と採算をカバーできる品目を選べば、耕作放棄地が減少し、雇用も生まれるのではないかと考え、仕組みづくりを始めた。耕作放棄地を借り、作業をできる農家に委託する方法をとった。
選んだ品目は「そば」。冷涼な気候の八幡平市は、昔からそばの産地で、そば栽培に適している。しかも、栽培にはあまり手がかからないのもメリットだった。
現在、小笠原さんは、仲間達とともに農事組合法人を設立し、そば栽培に取り組んでいる。
そば畑のひとつが岩手山や安比高原を臨むわんだい高原にある。
小笠原さんが運転する軽トラで山道を行く。しばらく行くと、いきなり森が開け、広大なそば畑が現れた。
「ここは以前、牧野だったところです。馬や牛が放牧されることがなく、手付かずになっていました。そばに適した畑に耕し、土壌改良をし、そばの種を植え始めたのです」
見わたすばかりのそば畑。白い花々の間をミツバチが蜜を求めて飛んでいる。耕作放棄地は、そば畑としてだけでなく、八幡平らしい美しい風景として蘇ったのだ。
そば粉に最適な空間で
職人や店に合わせた加工をする
収穫されたそばの実は、注文が入るたびにぬき実やそば粉に加工される。
加工場へ行くと、エアコンがフル稼働していた。そばは暑さに弱い。品質を保つため、1年を通して一定温度を保っている。小笠原さんは、「うちにはエアコンがないのに、加工場にはあるんだよ」と笑う。保存庫は1年を通して8度に設定されている。
注文が入るたびに加工するのは、そばの風味を残すためである。「わんだい高原蕎麦」では、ぬき実、十割、二八、打ち粉の4種類に加工する。そば粉の荒さも店や職人の希望にあわせて、60メッシュと50メッシュに挽く。
小笠原さんは、そば打ちもする。「しばらくやっていないからなぁ」といいながら、そばを打ってくれた。引き立て打ち立て茹でたてのそばは、香りがあり、口の中から鼻へと香りが抜けていく。思わず「うまい!」と声が出る。
耕作放棄地を減らし、雇用を増やし、そばの産地・八幡平らしい風景をつくる。小笠原さんたちの活動は、これからも続けられる。
そば畑を飛び回るミツバチ。開花時期になると、地元の養蜂場がミツバチの巣箱を設置する。そして、集められた蜜は、「そば蜜」として販売されている。濃い茶色のはちみつは、そばの香りと味がする。
わんだい高原蕎麦
(株式会社エリアサポート)
岩手県八幡平市田の沢87
TEL 0195-72-3339