八幡平の作り手 食卓になじむ食器の数々 曲線の形、持ち手の長さ
料理が映える皿を tamari窯 髙村まりさん
髙村さんの陶器を見るとほっとし、和んでしまう。
柔らかなフォルム、微妙に変化していく色合い。
使っていて楽しくなる、そんな食器ばかりである。
一生の仕事として
ふだん使いの食器をつくり始める
「tamari窯」へ行くと、工房前に草間弥生を彷彿させる前衛的なオブジェが並んでいる。そのことを聞くと、「学生時代の私は、ふつうの女の子を装いながら、内面は尖っていたんです。その頃の作品です」と髙村まりさんは苦笑した。
髙村さんの作品には「やさしい」「ふんわり」というイメージを受けるため、意外である。
髙村さんは、地元の中学校から不来方高校芸術系美術・工芸コースへ進学、そして、東北芸術工科大学へ進んだ。修業先には福島の陶芸工房を選んだ。
前衛的な作品から食器を製作するようになったのは、「陶芸を一生の仕事にしたい」と思ったからだ。
そして始めた食器づくり。工房を立ち上げて約4年。クラフト展に出展したり、口コミもあったりして、ファンが増えてきている。「かわいらしく、やさしい感じで、毎日使っていてもあきない」と好評だ。
人に寄り添うものをつくりたい
そのために試行の日々
髙村さんの食器は、色に特徴がある。青やクリーム色を基調としたふわっとした色合いだ。緑に近い青やクリーム色もある。文様も流れるようなものもあれば、グラテーションがかかっているものもある。
釉薬は配合によって色が変化する。
「もう化学の世界ですよ」と笑う。配合でも変わり、窯の中に置いた場所や温度でも異なってくる。
工房には、テストピースが何百個もある。裏面には、髙村さんしかわからない記号が書かれている。「きれいな色ですね」というと、「そうなんですけど、もっと深みがほしいと思うんです」
「100個つくっても、満足できるものが少ないときもあります」
髙村さんが目指す色は、青い色。鮮やかな青で、それでいてしっとりとしている。
「マット調の青といえば、いいかな」と首をかしげる。色は、人によって感じ方が異なるので難しい。でも、やりがいがあるという。
この色合いに惹かれた料理人からオリジナル食器の注文も入るようになった。共同しての作業は、新しい世界が広がるようで楽しい反面、苦しさもある。「これでいいのかな」と思いながらつくったという。しかし、料理が乗ったところを見て、驚嘆したのも1回や2回ではない。
髙村さんは、これからも「人に寄り添う、身近なものをつくっていきたい」という。各地のクラフト展などにも出展しているので、自分の想いを伝えられるよう接客にも力を入れたいと思っている。
「3年の時修業を終えて、八幡平市へ帰郷。生まれ故郷に工房を開いたのは、親や友達もいるからという。人柄の温かさ、自然のすばらしさなど、いまは一度離れたからこそ知るよさも感じている。
tamari窯
岩手県八幡平市平舘8-126-2
TEL 090-5185-6723
HP https://r.goope.jp/tamarigama