八幡平の作り手 八幡平をブランドに 異業種の仲間と
低GI米で地域おこし North Line40°+8 工藤光栄さん


北緯40度に位置する八幡平市の魅力を全国へ。
地元の仲間と設立されたのが「North Line40°+8」だ。
新しい事業の先駆者となり、地元に雇用を生むべく、
その第1弾として、米づくりに挑んでいる。
健康と美容をサポートする
低糖質米「サポメシ」
岩手県の県都・盛岡市から北上し、八幡平市に入ると、田園風景が広がる。秋になると黄金色に輝く田んぼの先に雄大な岩手山がそびえ、八幡平らしい秋の風景をつくり出す。
八幡平市で栽培される主な米は、「あきたこまち」や「いわてっこ」、「かけはし」などだ。比較的粘りがあり、冷めてもおいしいのが特徴である。いま、全国的に好まれ、食味ランキングで上位にのぼる米も、粘りと甘みが強いものだ。
しかし、多くの人の好みから離れている、新しいタイプの米を栽培しているグループが八幡平市内にいる。工藤光栄さんが代表を務める「North Line40°+8」である。
彼らが栽培に取り組み始めたのは2017年、きっかけは仲間の言葉だった。
「お米が大好きだけれど、糖質が気になって、おなかいっぱい食べられない」
工藤さんは、当時を振り返る。
「基幹産業が農業である八幡平市には、お米が大好きな人が多い。私たちも好きです。しかし、お米は糖質が高く、糖質や肥満を気にしている人はたくさん食べられない。好きなものを食べられないって、体のためとはいえ、つらいですよね」
そこで、消化・吸収されにくい難消化性デンプンを多く含み、一般的な米などに比べ、糖の吸収が緩やかな米を探し出し、栽培を始めた。それが「サポマイ」である。
「サポマイは、普通のお米と比べて、粘り気が少ないのが特徴。高アミロース米のため、血糖値の上昇を緩やかな、いわゆる〝低GI食品〟です。食べても消化が遅いので血糖値の上昇が緩やかなとなり、インスリンの分泌量が少なく、肥満予防やダイエットに効果的です」
サポマイを選んだ理由はもうひとつある。
「ほかで手がけている人が全国的に少ないというのもあります。せっかく栽培するなら、人とは違うものをやってみたいという想いもありました」
しかも、八幡平市のように冷涼な地でも育てやすい。また、気温が低いため、害虫の繁殖が低く、低農薬で栽培しすること可能だ。

地域をブランド化したい
誰もが知っている八幡平に
健康と美容をサポートする「サポマイ」を栽培している「North Line40°+8」のメンバーは、代表の工藤光栄さんを含めて6名。全員ふだんは違う仕事をしている。工藤さんは屋根工事業、中軽米貴人さんはアメニティグッズ専門店、村木洋志さんは燃料販売、袰岩泰平さんは足場組立業、高橋奨さんは電器屋、三浦秀樹さんは工務店と、業種もさまざまだ。
しかし、共通の想いがある。「八幡平市の魅力ある資源を発掘し、形にすることで、全国に八幡平市の良さや魅力を広めたい」という。
「私たちは、八幡平という地域そのものをブランド化したいのです。ブランド化に向けて、地域の利点を利用した利益が取れる事業を確立し、地域の雇用創出になればと思っています」
それが地域の課題である人口減少、地域活性化にもつながようと考えている。
「いまは『八幡平』というまちを知らない方が多い。知っていても『はちまんたいら』と言い間違える方もいらっしゃいます。全国の方が八幡平を知っているという日が来るようにしたいのです」
その手始めがサポマイの栽培だった。
サポマイは、高アミロース米のため粘り気が少なく、食感がパサパサしている。冷えると硬くなる特徴もある。一方でこれは、おかゆやリゾット、ドライカレー、パエリアになどに適しているということだ。
「今後、同じ低GI食品であるマイタケなど、八幡平市産の食材と組み合わせた雑炊などの加工品も考えています」と工藤さん。社名の由来である北緯40度(North Line40°)にある八幡平市(+8)の地域ブランドのための活動は始まったばかりである。


八幡平市は雪が多い。冬は除雪や雪かきの苦労はあるが、その雪は農産物に恵みを与えてくれる。春の雪解け水は、山や森林の栄養分を蓄えているから。清冽な水は、沢や川を下り、田畑を潤していく。