八幡平の作り手 使い手の気持ちを考える 曲線の形、持ち手の長さ
考え抜かれた「カトラリー」 平岡クラフト工房 平岡正弘さん


口は体の中で敏感な部分のひとつ。
だから、素材にも形にもこだわったカトラリーをつくりたい。
その想いから生まれた平岡クラフトのカトラリー。
1本ずつ手づくりでぬくもりのあるものばかりだ。
絶妙なフォルムが
食材をおいしく感じさせる
八幡平市松尾地区にある「平岡クラフト工房」の平岡正弘さんがつくる木製カトラリーは、絶妙なフォルムだ。それが感じられるのは、プリンや寄せ豆腐を食べたときに分かる。
平岡さんのスプーンの特徴は、口に入る先端の部分が薄い。
「厚すぎると口の中で違和感を感じてしまう。かといって、薄すぎると使っているうちに割れてしまいます。そのぎりぎりを狙った厚みにしています」
平岡さんにすすめられ、プリンをひと口すくってみると、プリンの表面を崩すことなくスッと入っていく。そして、口の中に入れると口当たりがよく、プリンの食感と味だけが感じられる。また、口に運ぶときのスプーンの皿と持ち手のバランスがいい。
「この形になるまで、かなりの時間がかかりました」といって、初期の作品を見せてくれた。厚みもフォルムも全く違う。
「つくっては、モニターをしてもらい、改良をしてまたモニターをしてもらうの繰り返しでした」
平岡さんのカトラリーは、すべてその方法でつくられている。調理用のヘラは、実際に料理人に使ってもらい、いまの形になった。ヘラに関しては、食材をすくいやすいように先端を内側へわずかに湾曲させているだけでなく、右利き用と左利き用もつくっている。

木製カトラリーで
食卓を楽しく
平岡さんの前職は技術者である。カトラリー制作は独学で覚えた。
「スプーンやフォークは、口の中に直接入るもので、口内の粘膜に当たります。わたしたち日本人は、昔から木を使って箸をつくってきたことからわかるように、カトラリーは木製のほうがよいと思うのです」
しかし、日本製で、手頃な価格で、口当たりの良さそうな木製スプーンが身近になかった。それがカトラリーづくりのきっかけとなったという。
木地には国産イタヤカエデを、仕上げに漆や天然オイルを使っている。イタヤカエデを使うのは、粘りが強く強度があるため。天然素材にこだわるのは、口に入るものだからだ。もちろん全て手づくりである。
特にスプーンの種類が多い。テーブルスプーン、デザートスプーン、ティースプーンとさまざま。それとセットで使えるフォークもある。
最近、好評なのが、ベビースプーン&フォーク、キッズスプーン&フォークだ。この2種類は、持ち手が握りやすいように太くなっている。
食事をとることは生きる基本となる。おいしく食べるためを追求した平岡カトラリーで、暮らしを楽しくしてみてはいかがだろう。


「平岡クラフト工房」の建物は、昔、松尾鉱山にあった小学校を移築したもの。リフォームが行われているが、りっぱな梁や柱が残っている。「東洋一の硫黄鉱山」と呼ばれた松尾鉱山の面影が、いまも八幡平市内のあちらこちらに残っている。
平岡クラフト工房
岩手県八幡平市松尾20-18-3
TEL 090-7311-6907
自社サイト https://www.instagram.com/hiraoka5223/
E-mail hiraoka5223@gmail.com