八幡平の作り手 有用微生物の力を借りて育つ
ミニトマト「キャロル10」 EM菌と米ぬかぼかしを使い
無化学肥料・無農薬での野菜栽培 ひまわりガーデン 外山一則さん
八幡平市のふるさと納税で夏期に1位を獲得したこともある
「ひまわりガーデン」のミニトマト「キャロル10」。
強い甘味と程よい酸味のバランスがよく、何個でも食べられる。
無農薬と土づくりにこだわったからこそのおいしさである。
転機は27歳
飲食業から農業の世界へ
「ひまわりガーデン」の園長・外山一則さんが就農したのは2002年(平成14)、27歳のときである。
「それまでフランチャイズのラーメン店の店長をしていました。本気で飲食の道に進もうと、北海道旭川市までラーメンの修業に行ったりしていたのです。しかし、父が病を患ったことがきっかけで、この地に戻ることになりました」
3代目として、父親から広大な田畑を受け継いだ外山さん。実家は祖父の代から続いた農家で、ここで育ったとはいえ、外山さんは農業に興味がなかった。そこで、本格的に取り組むにあたり、いまの自分ができることは何かを考えた。
「最初に決断したのは、父の代から始めた酪農を辞めることでした。ちょうど法律が改定されたこともあり、さらに古くなった設備を更新するために何百万も費用がかかると分かりました。それなら、母が小さなビニールハウスで栽培していたミニトマトを広げたほうがいいと考えました」
それが「キャロル10(キャロルテン)」だった。キャロル10は果実が肉厚で果皮が薄く、果色が鮮やかな品種。味も高糖度でありながら程よい酸味もある。外山さんは、このミニトマトが好きだった。
手始めに農協の補助金事業を使い、1棟60坪のビニールハウスの材料を5棟分購入。
「私、ハウスの材料を買ったら、組み立てまでやってくれると思っていたのですよ。骨組みを置いてそのまま帰ろうとするから尋ねたら、組み立ては有料ですと(笑)。費用を抑えたかったので、隣の農家さんに組み立て方を教わって、1棟目を建てるのに2か月くらいかかりました。5棟目からは慣れて1週間」
本当にイチからのスタートである。
「ひまわりガーデン」の園長・外山一則さん。
5棟のビニールハウスから始まったミニトマト栽培。現在は10棟。無農薬農業への転換を決意させた
EM菌との出会い
「最初の2年は、キャロル10を慣行農法で栽培しました」
慣行農法とは、一般的な化学肥料や化学農薬を用いた農法である。
「まじめに取り組みましたが、私の始めた年はミニトマトが大暴落の年でした。2年目には借金だけが増えていました。」
この時期に地元で有機農業を勉強している会に声をかけていただき、今も使っている有機肥料と出会った。
「3年目は、お金がないので農薬を使わずに栽培したら、なんとか作れたんですよ」
そこから研究をして、農薬を使わず、有機肥料でトマト栽培を始め、安心安全な野菜づくりができるようになったが、外山さんは「おいしく作れない」ことに納得がいかなかった。そのような時に出会ったのが「EM菌」だった。
「どうせなら美味しいと言ってもらいたいじゃないですか。そうしたら、お世話になっている方の家で食べる野菜が美味しくて、聞いてみたらEM菌を使っていると教えて頂きました」
EMとは「Effective Microorganisms」の略で、有用微生物群のことを意味する。有用微生物とは、乳酸菌や酵母、光合成細菌など、自然界に存在しているものである。
EM菌を使うようになり、ミニトマトの味も良くなってきたが、害虫や病気を排除できず、試行錯誤の連続。さらに勉強していくうちに無肥料栽培を知り、「過剰な肥料投与が野菜をメタボにして病害虫の原因になっている」と学んだ。そして、土壌診断をしながら、EM菌と適切な量の有機肥料の組み合わせを模索するように。
「うちの場合、有機肥料にEM菌と米ぬかぼかしでの土づくりが今のところベストです」
米ぬかぼかし作りは12月から始まる。EM菌を種菌にして米ぬかと糖蜜を加え、かき混ぜて、密閉して発酵させる。春には、ぬくもりを感じるふんわりとした甘酸っぱい香りがする。
EM活性液は、EM菌を種菌に水と糖蜜を加え、かき混ぜて発酵させる。発酵が始まると、ぷくぷくと泡が立ち、EM活性液が完成する。
発酵したEM活性液は、表面に微生物の保護膜が形成され、その下には紅茶のような色の液体が沈んでいる、微生物が元気に働いているような、ほんのり酸っぱく甘い、おいしそうなにおいがする。
これらを4月からミニトマトを定植する前にハウスの土に混ぜ込む。定植してからは、状況に応じて、EM活性液と酢を葉にかけて使用する。
EM菌に水と糖蜜を加え、培養器で発酵させる。発酵が進むと表面に保護膜ができる。上手に発酵が進むと、甘い香りがしてくる。
EM活性液の発酵具合を確認する外山さん。八幡平市のふるさと納税で
夏の期間ランキング1位に
5棟から始まったミニトマトは、現在10棟で栽培。ほとんどの品種が「キャロル10(キャロルテン)」で、一部にミニトマトの「アイコ」、大玉トマトをつくっている。
キャロル10の表面はつやつやとしており、ヘタのきわまで赤い。皮が薄く、少し歯を立てただけで中から果汁があふれてくる。果肉感もあり、トマト好きにはたまらないおいしさだ。甘味と酸味が程よく、2個3個と手が伸びる。
「最近は一般的に甘いミニトマトが好まれていますが、酸味もあったほうが、甘味を引き立ててくれるので、よりおいしいと思うのです」と外山さん。
ミニトマトの出荷は6月から9月。同じビニールハウスでも7月と9月では風味が少々変わる。出始めは皮が少し固く、徐々に皮が柔らかくなり、甘味がのってくる。
収穫したキャロル10は選別され、1個ずつていねいにパック詰めされる。出荷先はJAへの出荷の他、ひまわりガーデン前に設置した無人産直やスーパー、沖縄県のホテルなどだ。
「どの時期のミニトマトもおいしいですが、この小さな違いも楽しんでほしいと思います」
外山さんのキャロル10は、八幡平市のふるさと納税の返礼品にもなっており、八幡平市の返礼品ランキングナンバー1になったことも。リピーターが多く、毎年のようにオーダーしてくれる人が全国にいる。
ミニトマトが終わる10月、外山さんはミニトマトを掘り起こし、ビニールハウスの中の土を整え、八幡平市の特産品であるホウレンソウを栽培する。外山さんのホウレンソウは、葉に張りがあり、甘味があっておいしいと評判だ。
別のビニールハウスでは、菌床しいたけの栽培が行われている。
「野菜づくりの基本は土づくり。この良し悪しで、その年の野菜の味が決まると思っています。あとは、八幡平市の気候です。ここ(八幡平市大更)は、岩手山と姫神山を望み、風景がいいでしょう。山に囲まれていますが、風の通りもよくて、寒暖の差もあり、野菜栽培には適しています。この地形だからこそと思っています」
収穫されたミニトマト「キャロル10(キャロルテン)」。
収穫後は選別し、パック詰め。父親の代まで牛舎だったのをリフォームして作業場として使用している。
ひまわりガーデン前にある無人産直。グリーンシーズンは、ひまわりガーデンの畑から収穫されたさまざまな野菜が並ぶ。
八幡平市大更には、岩手山と姫神山、送仙山の伝説が残る。岩手山から離縁を言い渡された姫神山は送仙山に連れられて出ていくが、あまりの悲しさに歩みが進まない。それを不憫に思った送仙山は、北上川を渡った反対側に姫神山を座らせる。しかし、それを知った岩手山は、遠くに連れていくようにとの命令に背いた送仙山を呼び出し、首を刎ねてしまう。送仙山の上が平なのはそのためである。
「ひまわりガーデン」はそれらの山々を望む地にある。山に囲まれているが、心地よい風が通るのが八幡平市大更という地。そして、岩手山からの伏流水が田畑を潤す。この恵まれた自然は次世代に残したい宝である。
ひまわりガーデン
岩手県八幡平市大更40-141-4
TEL 0195-76-4672
E-mail stymkznr169@gmail.com
