八幡平の作り手 守り続けたい味 先代からの味を受け継ぐ
馬印一番の「南部せんべい」 有限会社羽沢製菓 羽沢憲英さん
岩手の郷土菓子「南部せんべい」。
「羽沢製菓」の羽沢憲英さんは、「伝統の菓子だからこそ、
先代から受け継いだ技術と味を大切にしたい」という。
日々、そのための努力をし続けている。
南部小麦の風味を
活かした安心の味
昭和ノスタルジーが漂う荒屋新町商店街の一画に「羽沢製菓」がある。古民家風の店内に「南部せんべい」や「かりんとう」、「ごぼう煎餅」などが並ぶ。特に南部せんべいの種類が多く、定番の胡麻をはじめ、落花生、ピーナツ、くるみ、アーモンド、カボチャ、いか煎餅と種類が豊富だ。
羽沢憲英さんは、南部せんべいやかりんとうなどの菓子をつくる上で、「先代からの受け継いだ味を変えない」ことを決めている。
「味を変えると、お客さまにすぐ分かってしまうのです」と羽沢さん。原料に使う小麦粉は夏と冬では性質が変わるので、微妙な調整が必要となる。
小麦粉は岩手県産の南部小麦を使用し、添加物を一切使用していない。水と塩を加え、練り上げた生地を切り分け、南部鉄の皿に乗せ、1枚ずつ手焼きをしていく。焼きたての南部せんべいは、さくっとした軽やかな食感だ。
刻印は「馬印一番」
羽沢製菓の南部せんべいには「馬印一番」という刻印がある。
「先代まで家に馬がいました。それで『馬印』なのです」と羽沢さん。
南部鉄の皿に文字や絵が彫り込まれているのは理由がある。熱い鉄皿の上に生地を乗せると生地が冷たいほうへ逃げようとする。それを真ん中に抑えるためについているという。
「窯の中は200度の高温。その中をせんべいが約8分かけて1周し、焼き上がりとなります」
年季が入った窯は、羽沢さんが先代とともに土台から組み上げたものだ。17台あるなかには25年以上も前に導入したものもある。どの窯にも愛着があり、大切に使い続けている。
「どんなに機械化されても、この窯でなければ、羽沢製菓の南部せんべいの味をつくることができない」とも話す。
伝統の味を守りつつ、新しい商品も開発している。そのひとつが「ごぼう煎餅」。甘醤油の味に唐辛子が効いた新感覚の南部せんべいである。袋を開けるとゴボウの香りがふわっと広がり、食べるときんぴらごぼうのような味がする。せんべいの裏面には、もちろん「馬印一番」が刻まれている。
南部せんべいは、南部地方に住む人によって、馴染み深い菓子である。だからこそ、いつ食べても変わりなく、おいしいものであってほしいと願う。羽沢製菓の南部せんべいを食べると、味わう人の想いをかなえてくれていると感じられる。
2枚組の型が65セット入っており、8分かけて1周する。
昭和26年(1951)に岩手県の推奨品種に採用されて以来、岩手の小麦の主力品種となっている。豊かな風味が特徴で、パンづくりにも使われる。羽沢製菓では、南部小麦の風味を活かし、柔らかく軽い食感を出すために、添加物を使用していない。
有限会社羽沢製菓
岩手県八幡平市清水141-5
TEL 0195-72-3020
HP https://hazawaseika.com/