八幡平の作り手 八幡平の自然を布に表す 染料と地熱蒸気を
巧みに操る色の魔術師 株式会社地熱染色研究所 染色作家
高橋一行さん・高橋陽子さん
大地からの地熱蒸気を使い染めあげる「八幡平地熱蒸気染色」は、
多くの色を使った微妙なグラデーションが特徴である。
これは地熱蒸気だからこそできることで、
世界各国の地熱蒸気を有するどの国にもない技法である。
染料を組み合わせと
地熱蒸気で色を表現する
日本国内には、さまざまな染色技法がある。その中でも「八幡平地熱蒸気染色」は、とりわけ独特である。国内初の地熱発電所である「松川地熱発電所」から噴出する高温の地熱蒸気が必要不可欠だからだ。
「アートフラワーをライフワークにしていた母が、この地熱蒸気を使って染色ができないだろうかと思ったのが始まりでした」と話すのは「地熱染色研究所」の染色作家・高橋一行さん。
染色工程は、仕上がりの模様を予想して布を寄せて糸で硬く括ることから始まる。絞った布は、調合した染液で着色され、地熱蒸気で満たされた釜で蒸される。文字にすると簡単だが、実際は難しい。
「染液は15色あり、それを組み合わせて色を表現していきます」
絞った布の角を次々と染液につけていく。
「この色がそのまま出るのではなく、地熱蒸気に含まれる硫化水素の脱色作用により、色が抜ける染液もあります。この仕組みを利用して、微妙なグラデーションや模様を作り出していくのです」
まるで色の魔術師だ。
染色で染まった布は、100度から150度の蒸気で満たされた釜の中に入れられ、約20分間蒸される。地熱蒸気は大地のエネルギーだ。天気や気温に左右されて蒸気温度が上がらない時もあるという。この場合は蒸す時間が長くしなければならない。
布の絞りや染色具合、地熱蒸気の状態で微妙に変化するため、同じものをつくろうとしてもできない。
「だから、世界で、ただひとつのものとなるのです」
表現するのは
八幡平の四季の自然
高橋一行さんは、母・陽子さんの染色活動を間近で見て育ち、自らも自然の力によって生まれる色に魅せられ、この世界に入った。
布地に表現するのは、八幡平を取り巻く自然風景である。岩手山や八幡平に咲く高山植物の数々、初夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色……。その色を表現するために、岩手山や八幡平など、市内の山々に登る。
「シーズン中は毎週のように出かけますね」
その時の相棒はキャノンの一眼レフ。盛りを迎えた花の美しさ、新緑のみずみずしさ、樹氷原のきらめきなどを撮影する。
「私は、春早く、岩手山の岸壁に咲くユキワリコザクラが好きなのです」
その花をイメージしたドレスは、ピンクか水色、緑色へと変化するグラデーションが美しく、八幡平地熱染色染が持つ幅広い多様性と可能性を感じさせる。
「布地の種類、大きさ、デザインによっても、いろいろな変化を見せるのが八幡平地熱染です」と高橋さん。
近年は、世界に類を見ない地熱を使った染色であること、幅広い多様性もあることから世界からも注目されている。
八幡平地熱蒸気染色は、八幡平の自然をモチーフにしている。高橋一行さんは、時間によって、季節によって、天気によってみせる風景が異なり、日々魅せられるという。自然から受けたインスピレーションを布に映していく。
GEOCOLOR 八幡平地熱蒸気染色
株式会社地熱染色研究所
岩手県八幡平市松尾寄木松川国有林559林班ヲ小班
TEL 0195-78-2451
営業時間/8:30~17:30
HP http://geo-color.com/
E-mail geocolor@basil.ocn.ne.jp
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