八幡平の作り手 八幡平の自然を表現する 日本唯一のオーガニック専用の醸造所として
自然とともに育むクラフトビールを目指す。 暁ブルワリー
八幡平ファクトリー 中林悠さん


2020年9月、八幡平市松尾寄木にオーガニックビールを醸造する
「暁ブルワリー 八幡平ファクトリー」が誕生した。
岩手山の雪解け水で仕込み、地熱発電を活用した循環型ブルワリーとして
八幡平市に新たな風を吹き込んでいる。
八幡平の風景が見える
オーガニックビール
2020年9月、八幡平市松尾寄木にオーガニックビールを醸造する「暁ブルワリー八幡平ファクトリー」が開業した。
工場は岩手山を間近に望む地に建ち、徒歩でも行ける距離に日本名水百選に選ばれた湧水「金沢清水」がある。暁ブルワリーの岡部泉社長は、東日本大震災の復興支援のため、東京から岩手にきていたときに金沢清水を知ったという。そして、この湧水を飲み、「この水でビールをつくりたい」と思ったという。
初めて仕込んだビールは、ドイツ産有機栽培大麦麦芽や有機ホップを使ったオーガニックピルスナー。求めた味は、クセがなく、すっきりとした喉落ちがよく、岩手山を覆う青い空のように清んだピルスナーである。
2020年9月に仕込みを始め、11月に発売した。名称は、八幡平の鏡沼で雪解けの一時期だけ見られる「八幡平ドラゴンアイ」からとり、「ドラゴンアイ」と命名した。そして、シリーズの中心となるオーガニックピルスナーを「スカイ」、ホップの苦味が感じられるオーガニックIPLは岩手山をイメージした「マグマ」、夏の太陽を想起させるオーガニックゴールデンエールは「サン」、雪をイメージしたオーガニックペールエールは「スノー」と名付けた。



金沢清水を仕込み水に
調整せずに使う
ビールの主成分といえば、真っ先に大麦麦芽(モルト)やホップを思い浮かべるが、水もビール醸造に欠かせない重要な主成分である。
醸造スタッフの中林悠さんは、「水の存在が大きい」という。
「ドラゴンアイ」の仕込みに使われているのは、金沢清水の天然水である。金沢清水は日本名水百選のひとつに選ばれている湧水であり、毎時450トンと湧出量を誇る。岩手山や八幡平などの山々に降った雨や雪が地中深く染み込んで濾過され、長い歳月をかけて雪解け水として再び地上に流れ出してきたものだ。
通常、ビール醸造では、ビールの風味を一定にするため、水に含まれている成分を調整してから仕込み水として使用する。しかし、暁ファクトリーでは、金沢清水の天然水の成分を調整せずにそのまま使っている。
「天然水ですから、季節によって、場合によっては日によって水の成分が異なります。水質を調整するとビールがつくりやすいのですが、敢えてしないのは、金沢清水を使うことに意味があるからです」
だから、味が微妙に変化する。極端に風味が異ならないようにするため、大麦麦芽やホップなどで調整する。
2021年9月で醸造開始から1年経つ。1月入社した中林さんは仕込みを通して、季節の違いも感じている。
「1年を通して、水の成分の違いがわかってきても、それが来年も同じように成分が変わるのかどうかわからない。でも、それがドラゴンアイの個性だと思います」
「ドラゴンアイ」は4種類発売されているが、岡部社長によると、ゆくゆくは金沢清水の七つの頭を持つ蛇龍の伝説にちなみ7種類の発売を目指している。



水のおいしさはビールの味にも影響を与える。八幡平ファクトリーでは、仕込み水に金沢清水の水を使用。
暁ブルワリー 八幡平ファクトリー
岩手県八幡平市松尾寄木1-474-6
TEL 0195-78-8994
HP https://akatsuki-brewery.com